EXHIBITION|ISOT2012 ISOT国際文具紙製品展2012
HALL|東京ビックサイト
SIZE|3.0 m×3.0 m×2.7 m(1.0 小間)
CLIENT|株式会社ワークス松下 様
三角スケール。通称「さんすけ」。
建築の設計やインテリアデザインに関わっている人ならなじみの道具。最近では、「デザイングッズ」として多くの文具専門店で扱われています。
その三角スケールを製作する会社が日本にはほとんどないことはあまり知られていません。
今回の出展である「ワークス松下」さんはその企業のうちの一つ。
ISOT国際文具紙製品展は、毎年7月に行われる文具系の展示会です。大手を含め多くの文具関連メーカー・企業が参加しています。
主催はリードエグジビションジャパンさん。東京ビッグサイトで開催されており、同時開催としては、雑貨EXPO、DESIGN TOKYOなどがあります。
さて、今回のワークス松下さんのISOT国際文具紙製品展への出展は、小間サイズとしては、「半小間」というサイズ。
展示会では、通常3m×3mを「1小間」と呼びますがリードエグジビションさんは「6m×2.7m」を1小間と呼んでいます。
ですので、今回は「半小間」という呼び方をします。
今回のこの記事では便宜上、展示会の通例に則って、リードエグジビションさんの「半小間」を「1小間」と呼ぶことにします。
1小間(半小間)でのブース構成手法
展示会に出展してブース集客を実現したい、と考えた場合、今回のような「1小間」サイズでは、集客を成功させるための「成功パターン」のようなものがあります。まずはじめに注意して考えておきたいのは、「会社名」を掲げる場所。
どの展示会でも、3m×3mの「1小間」では、会社名を掲げる場所は共通しています。
それはどこだか分かりますか?
そう。多くの人は、「正面上部にあるパラペットの部分ね」と答えるのではないでしょうか。パラペット、つまりブース(高さは通常2.7mです)の上にある横に伸びている「梁」(建築用語では梁といいます)の部分。この部分を展示会業界では「パラペット」と言っています。
会社名はこのパラペットの中央部分に大きな文字で「〇〇株式会社」というような表記をするのです。
ここで、皆さん、来場者になったつもりで考えてみていただきたいのですが、このパラペット部分の会社名、どの位置から見えるでしょうか。10m前から? 20m前から?
いえ。おそらくほとんどの方が、「ブースの前に来た時」、と答えるのではないでしょうか。
そして、そのようにブースの前にたどり着いた時に「〇〇株式会社」と記載していて「ちょっと寄ってみよう」と思うでしょうか。
おそらく、知っているほど有名な企業なら「ちょっと寄ってみようかな」と思うかもしれません。しかし、展示会に出展しているほとんどの企業は、あまり知られていない無名の企業。ましてや、寄ってきてほしいのは「新規顧客」。
そうすると、ブースの前面に掲げているのが、「会社名」ではだめなのではないか、との考えになります。
キャッチの言葉をブースの左右の壁面上部に記載する
では、どの位置に「会社名」を書けばいいのでしょうか。
いや、そもそも「来場者」にはまずどんな情報を与えればいいのでしょうか。
それは「何を扱っている会社なのか」という情報です。
今回の出展者であるワークス松下さんの場合、「ワークス松下」という名前をブースに記載しても新規の来場者は集まってはくれません。知る人ぞ知る「さんすけ」という言葉を用い、「あ、さんすけだ。珍しい」と思っていただくことを狙って、キャッチの言葉は「さんすけ」とシンプルな言葉にしました。
この言葉を、ブースの左右の壁面の「通路際」に掲示します(写真下)
この位置だと、通路のかなり前の方からキャッチに気が付くことができるのです。
さらにポイントは「頭より上」であること。ブースの前が来場者でにぎわった際に、「なんのブースなのか」が分かりやすくなるのです。
今回のように、3方向がふさがっている1小間ブースの場合、両壁面の上部にキャッチの言葉を掲示することが、ブースを分かりやすくするために重要なポイントとなります。
では、会社名はどこに書けばいいのでしょうか。それはブースに立ち寄った来場者に気が付いてもらうように、複数の場所に掲示しておくといいですよ、と当社では説明しています。当然会社名は覚えて帰ってもらわなければいけません。そこで、ブースのいろんな場所に小さくでもよいので、記載しておくのです。もちろん、大きなサイズで記載してもよいのですが、重要なことは「キャッチの言葉(=何を扱っているか)」の方が「先に目に入ってくるようにする」ことです。
「商品」を陳列するのではなく「可能性」を展示する
今回のISOT国際文具紙製品展のこのブースで陳列する商品は、三角スケールなどの定規類になります。会社の種類が販売をする企業というより、「製造」する側になるので、ブース内部の陳列の方針は、「商品を陳列」するのではなく「可能性を展示する」ことを重視しています。そこでブース内部には、「完成した商品」だけでなく、「こんな表現ができます」「こんな技術があります」と言った「途中経過の部品」も置くようにし、来場者の方々に自由に手に取っていただき、自身で自社の商品としてどのようなものが考えられるか、「妄想」していただくようにしました。「商品」ではなく「技術」を売りたい企業様の場合はこの方法がもっとも効果的です。
両サイドの壁面は、遠くから「何だろう」と思っていただくために、「ちょっと近寄ってみよう」と思っていただくために、敢えてランダムな陳列方法を用いています。壁面にこのようにランダムに陳列すると、遠くからでも気になってしまいますよね。これも、来場者を引き寄せるための仕掛けになっています。
ちなみに3方向を壁で囲まれた今回のような小間形状の場合、通路ぎわ、その中央に上記のような展示台を設置しておくと来場者の方々は手に取りやすくなり、更にこの部分に来場者が「滞留する」ようになるので、常に賑わっている感が見せられるようになります。
遠くから見て来場者が群がっているように敢えて見せる。このことも集客を実現するために、展示会出展の結果を出すために大事な要素になります。
結果はこのようにブースに来場者が集まるように。このように集まっても、頭の上に「さんすけ」の文字が書いてあるので、知っている人は「あ、さんすけ」となりますし、知らない人は「さんすけ????」となります。
1小間ブースで集客を実現しようとすることは一見難しく感じます。限られた面積で、どのように工夫すればいいのか、と。
しかし、コツさえわかってしまえば、成功するためには、シンプルな「勝ちパターン」があるんですね。
本記事の監修者について
- 兵庫県姫路市生まれ。法政大学大学院工学研究科建設工学専攻修了。一級建築士。1996年4月・五洋建設株式会社入社。2005年6月・インテリアデザイン事務所ディーコンセプトデザインオフィス(現・SUPER PENGUIN株式会社)設立。2006年5月・東京インテリアプランナー協会 理事就任 / インテリア系展示会IPEC/JAPANTEX実行委員会。2008年5月・東京インテリアプランナー協会 副会長就任 / インテリア系展示会IPEC/JAPANTEX実行委員会。2012年9月東京造形大学 非常勤講師(~2018)
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